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ニュートン力学、特殊相対論における座標系概念

 座標系とは巨大な情報収集系であると考える。

 

 ニュートン力学における座標系概念

 空間全体に直交座標系を導入し、それによって空間の各点に数の組からなる座標を割り当て、また、各点に同期した時計を配置しているシステム全体が座標系である。そして空間内である事象が起こった時、その位置と時刻をデータとして収集する。ここで注意しなければならないのは、事象の起こった時刻というのはその位置における時計で計るという点である。したがって、原点にいる観測者が事象を観測した時の時刻とは概念的に区別されなければならない。(例えば光速度が有限であれば、原点にいる観測者の観測時刻は、座標系が収集する時刻とはどうしてもずれる。)

 

 空間全体に直交座標系が本当に導入できるのか、また本当に各点に同期した時計を配置できるのかは批判的に検討することはない。それらは当然可能であると思っている。つまり空間は三次元ユークリッド空間であり、時間は空間のどこでも等しく流れている(絶対時間の概念)と考えている。(そもそも直交座標系とは何かとか、空間が三次元ユークリッド空間であるとはどういう意味か、ということについてのちゃんとした話は、リーマン幾何学の部分でする予定である。)

 

 これらの運動学についての諸仮定について批判的検討がなされなかったのは、別にその時代の物理学者が怠惰であったからではなく、単にそれらの仮定からその時代における実験事実に反するような不都合な結果が出てこなかったからであろう。普通は、人間の観測技術が向上し、また扱う物理的現象が拡大してゆくにつれて、古い概念に批判的検討がなされることになる。実際、マイケルソン・モーリーの実験によって光速度の不変性が示唆されて、アインシュタインは運動学を修正するという着想に導かれたと思われる。それが特殊相対論である。

 

 特殊相対論における座標系概念

 空間全体に直交座標系が導入できるという所までは同じである。しかし、ここで本当に各点に同期した時計を配置できるのか、という問題が議論された。これは結局可能なのであるが、この時に絶対時間の概念を用いずに光による時計同期のアイデアが用いられた。(詳細は省く。)

 

 したがって表面上は、システムとして、ニュートン力学と特殊相対論の座標系は同じものである。(ニュートン力学と特殊相対論で変わるのはこれらの座標の間の座標変換がガリレイ変換ではなくローレンツ変換で与えられるという点である。特殊相対論的効果はローレンツ変換から導かれる。今考えているのは座標系間の関係ではなく、座標系という概念そのものの性質である。)だから特殊相対論における慣性系概念をニュートン力学の慣性系概念で定義することが許される。しかし、絶対時間の概念が放棄されたことは注目に値する

 

 一般相対論における座標系概念

 この記事で改めて話すことにする。